富士山ー信仰の対象と芸術の源泉
- By: Tomo
- カテゴリー: 世界遺産検定3級4級

本日は日本一の山、富士山とその周辺の景観などが登録された世界遺産です。ご存知の方も多いと思いますが、自然遺産ではなく文化遺産での登録となりました。その理由を簡単に説明するならば、ゴミ・し尿問題、周辺開発などへの影響といったところでしょうか。
日本一高い山として、圧巻で美しいその景観、そして信仰の対象としても深く崇められてきた歴史について学びたいと思います。
①基本情報
静岡県・山梨県
登録年:2013年
登録基準:③⑥
②基礎知識
富士山は、古くから激しい火山噴火を繰り返してきた。人々から恐れられる存在であったが、それと同時に霊山として神聖視されていた。
806年は、富士山の火山活動が最も激しかった時期にあたる。天皇は、富士山の噴火を鎮めるよう*坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)に命じ、浅間大神(あさまのおおかみ:*木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと))をまつる*富士山本宮浅間大社(ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ)をつくらせた。
のちに徳川家康が建てた2階建ての本殿は、「浅間造り」と呼ばれる珍しいものである。
また富士山信仰では、ご神体である富士山そのものに登る*登拝(とはい)が特徴である。江戸後期には、巡礼として富士山や周辺の霊場、神社などを巡る「*富士講」が信仰を集め、多くの人が富士山に登った。
*登拝:ご神体である山そのものの登ることが祈りにつながるという信仰形態
*富士講:富士山を信仰し、富士登山や巡礼を行う集団
富士山と周辺の景観は、信仰の対象だけでなく、その優美さから多くの芸術や文学、歌の題材にもなった。富士山を題材に含む文学としては『万葉集(まんようしゅう)』や『竹取物語(たけとりものがたり)』、太宰治の『富嶽百景(ふがくひゃっけい)』などがある。また絵画(浮世絵)においては葛飾北斎(かつしかほくさい)の『富嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)』や歌川広重(うたがわひろしげ)の『東海道五十三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)』などが知られている。
*坂上田村麻呂:平成時代の武官。征夷大将軍を務めた。『古都京都の文化財』の清水寺を建てたことでも知られる。
*木花之佐久夜毘売命:日本神話に登場する、水をつかさどる女神。火の中で出産をした神話から、安産や子育ての神でもある。
③構成遺産
構成資産は、静岡県と山梨県にまたがる25資産。構成資産には神社や富士講の遺跡、登山道などの文化遺産と湖沼や滝、森林などの自然がが含まれているが、寺は1つも含まれていない。
主な構成遺産
富士山域(登山道や西湖などを含む)
富士山本宮浅間大社
山中湖
河口湖
忍野八海(おしのはっかい)
白糸ノ滝
三保松原
富士山本宮浅間大社
富士山により近い遥拝所(ようはいじょ)であった山宮浅間(やまみやせんげん)神社から、806年に現在の地に遷(うつ)された。離れた場所にある富士山の山頂も、その境内となっている。
三保松原

忍野八海

麓に位置し、富士山の雪解け水を水源とする8つの湧水池
白糸ノ滝

*富士五湖:富士山麓にある5つの湖の総称(山中湖・河口湖・本栖湖・西湖・精進湖)
④似ている世界遺産
オーストラリア連邦 ウルル、カタ・ジュタ国立公園

1987年登録/1994年範囲拡大 登録基準⑤⑥⑦⑧ (複合遺産)
『ウルル、カタ・ジュタ国立公園』は、オーストラリア大陸の中央部に位置するウルル(エアーズ・ロック)とカタ・ジュタと呼ばれる大小36の巨大岩群を中心とする国立公園。
ウルルは世界で2番目に大きな一枚岩で、地殻変動によって海底にあった堆積物が地表に現れたものである。多くの鉄分が酸化した赤色に見える。国立公園内では、貴重な生態系を持つ多くの動植物を見ることができる。
また、この地域では先住民アボリジニが伝統的な生活を営んでいる。ウルルはアボリジニにとって聖地となっており、彼らの神話や伝承を描いた約1000年前の岩壁画も数多く残されている。はじめ自然遺産として登録されていたが、1994年に文化的景観(文化遺産)の価値も認められ、複合遺産となった。
⑤本日の練習問題
世界遺産検定4級からの問題です
[1]『富士山ー信仰の対象と芸術の源泉』に関し、江戸後期には富士登山や巡礼を行う集団が多く組織されました。書の集団の名称はなんでしょうか。
①伊勢参
②富士講
③伊勢組
④富士結
[2]以下の文中の空欄に当てはまる語句は何でしょうか(2つのカッコ内には同じ語句が入る)
富士山と同様に、自然物が現地の人々にとって信仰の対象となっている遺産としてオーストラリア連邦の『( )、カタ・ジュタ国立公園』があります。( )は先住民の聖地となっている
①キロロ
②アルル
③ウルル
④チロル
以下回答です
[1] ② [2] ③
如何でしたか?
富士山の噴火を鎮めるために建てられた神社とは何とも興味深いです。その時代の信仰の深さが伺い知れますね。
静岡や山梨だけでなく、関東に住む方にとっては天気が良ければ、毎日見ることができる場所に住む方も多いのではないでしょうか。関西に住む私としては、あれだけ高い山、遠くからでも見つけられる山、憧れです。飛行機に乗るとき、新幹線で東京へ向かうときついつい探してしまう。
そんな富士山。いつか自然遺産としても認められて、複合遺産として登録されるといいなと、密かに思っています。
では、また明日。
tomo