世界遺産に登録されるには

本日は「世界遺産になるには?」について学びます。

2018年7月に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界遺産として登録されたことは記憶に新しいと思います。世界遺産にになるにはどのような手続きが必要になるのでしょうか?

崎津協会@熊本県天草市の崎津集落 「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成遺産

ここで思い出して頂きたいのが「世界遺産世界遺産リストに記載された顕著な普遍的価値を持つ建造物や遺跡、景観、自然などのこと」であることです。そして、この世界遺産リストに記載する遺産は、1年に一度開催される「世界遺産委員会」で審議され決定します。

この世界遺産委員会は21カ国からなり、世界遺産条約の締約国の間で持ち回りで開催され、専門機関による事前審査をもとに各国から推薦された遺産について話し合いを行います。あくまでも推薦される事が前提であり、ユネスコや世界遺産委員会が一方的にリストに記載することはありません。

評価には「登録」以外に「情報照会」「登録延期」「不登録」の4つがあり、「情報照会」または「登録延期」の場合には、翌年以降の再挑戦となりますが、残念ながら「不登録」となった場合には世界遺産となることができません。

では、もう少し具体的にみていきましょう。  

①世界遺産申請

世界遺産に申請するためには5つの条件が必要になる。

1. 遺産をもつ国が世界遺産条約の締結国であること

ユネスコの加盟国である必要はない。

2. あらかじめ各国の暫定リストに記載されているこ

世界遺産条約の締結国は、世界遺産登録を目指す遺産が記載された「暫定リスト」を作成し、ユネスコの世界遺産センターへ提出する。その中から、推薦書作成や法整備などの要件の整ったものを、1年に1件までユネスコの世界遺産センターへ推薦することができる。

(2017年までは1年に2件までの推薦が可能でした)

3. 遺産を保有する国自身から申請があること

有名であったり、保護が必要な遺産であっても、保有国から申請のない遺産は世界遺産のリストには記載されない。

唯一例外:第三次中東戦争以降イスラエルが実効支配しているものの、国際社会が認めていないことから領有権がはっきりしていないエルサレムにある『エルサレムの旧市街とその城壁群』は、ヨルダンが代理申請し、保有国は実在しない国「エルサレム(都市名)」となっている。

4. 遺産が不動産であること

土地や建物のように、動かすことのできない不動産でなければならない。

例外:「最後の晩餐」のような壁画や「奈良の大仏」のような巨大な像は、不動産の一部として登録されている。

5. 遺産を保有する国などの法律で保護されていること

遺産の保護は条約締結国の義務と責任であるため、申請する遺産は各国の法律で保護されていなければならない。

 

②世界遺産登録

条約国からユネスコの世界遺産センターに推薦された遺産は、文化遺産であればICOMOS(イコモス:国際記念物遺跡会議)、自然遺産であればIUCN(アイユーシーエヌ:国際自然保護連合)が専門調査を行う。

その結果をもとに「世界遺産委員会」によって会議が1年に一度開催され、世界遺産リストへの記載の可否が審議、決定される。

日本の場合、文化遺産であれば文化庁もしくは内閣官房が、自然遺産であれば環境省と林野庁が暫定リストから候補を選定し、それぞれ世界遺産条約関係省庁連絡会議において日本から推薦される遺産が決定される。その後、推薦書の提出を内閣府が閣議了解してはじめて、世界遺産センターに推薦書が送られる。

世界遺産リストに登録されるためには、「世界遺産条約履行のための作業指針」で示されている下記の登録基準のいずれか1つ以上に合致するとともに、真実性(オーセンティシティ)完全性(インテグリティ)の条件を満たし、締約国の国内法によって、適切な保護管理体制がとられていることが必要である。

世界遺産の登録基準

世界遺産リストに登録されるには、全10項目からなる登録基準のいずれか一つ以上に当てはまることが必要である。

(i)  人間の創造的才能を表す傑作である。

(ii)  建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値感の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。

(iii) 現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。

(iv) 歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。

(V) あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの

(vi)  顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。

(vii) 最上級の自然現象、又は、類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。

(viii)  生命進化の記録や、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的又は自然地理学的特徴といった、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。

(ix)  陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。

(x)  学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅のおそれのある種の生息地など、生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。

世界遺産委員会

21カ国で構成される世界遺産委員会の任期は6年で、2年に一度でも開かれる世界遺産条約締約国会議で7カ国が改選される。(できるだけ多くの国が委員を経験するために4年で交代すること、任期を終えた国は次の立候補までに6年間あけることが望ましいとされる。)

世界遺産に推薦された遺産の審議のほか、危機遺産リストへの遺産の登録や解除、世界遺産基金の使い道の決定、世界遺産条約履行に関する諸事項などが審議の対象となっている。

 

③本日の練習問題

今日はボリュームが多く、難しい内容でしたね。今日は2017年3月と7月の検定からの問題です。

2017年3月の検定からの問題

[1]世界遺産に申請するために必要な条件として正しいものはどれか

①申請される遺産が不動産であること

②遺産をもつ国が国際連合の加盟国であること

③遺産を申請する際に、2カ国以上の他国の推薦を得ること

④国を代表する観光地であること

[2]ユネスコの世界遺産センターに遺産が推薦された後に、自然遺産の調査を専門的に行う機関として正しいものはどれか

① WHO   ② UNCTAD  
③IUCN   ④ICOMOS

2017年7月検定からの問題

世界遺産の申請・登録に関する次の文章を読んで、以下の問いに答えなさい

世界遺産に申請する際、各国政府はいくつかの(a)条件を満たした遺産の推薦書を( A    )に提出する。推薦書が受理された遺産は(b)IUCNやICOMOSの調査を受けたのち、世界遺産委員会によって世界遺産リストへの登録可否が決定される。  

[3]下線部(a)「条件」のひとつとして正しいものはどれか

①遺産を保有する国が国際連合の加盟国であること

②各国を代表する優れた動産、または不動産であること

③遺産を保有する国自身から申請があること

④遺産を保有する国の近隣諸国が、推薦書の内容に合意していること  

[4]文中の空欄(A)に当てはまる各国政府からの推薦を受理する組織として、正しいものはどれか

①ユネスコの世界遺産センター ②ユネスコ総会

③世界遺産委員会の開催国   ④ 国連総会  

[5]下線部(b)「IUCN」の説明として正しいものはどれか

①国際法の専門家で構成される委員会である

②各国の観光促進を目的として設立された国連の専門機関である

③文化財の保存に詳しい専門家や団体で構成されたNGOである

④各国政府や自然保護団体などで構成される自然環境保護組織である  

以下、回答です

[1] ①  [2] ③  [3] ③  [4] ①  [5] ④

世界遺産の申請・登録については、昨日のテーマである世界遺産条約や誕生のきっかけとともに、毎回問われる問題ですのでしっかり押さえておくと得点源になりそうです。

では、また明日。

tomo

5 comments

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