基礎知識④世界遺産登録の流れ

世界遺産検定2級
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この記事は世界遺産検定2級学習用に構成しています。

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世界遺産が登録されるまでの流れは、4級の学習でもやりました。
2級学習では1つ1つの項目をより深掘りしています。
また、登録と併せて出題の多い文化的景観についても解説しています。

①世界遺産登録の流れ

<自国でリストの作成・提出>
文化財や自然の世界遺産登録を目指す国は、まず世界遺産条約を締結しているというのが条件となります。
また、遺産自体を保有する国自身の推薦である必要があります。
それぞれの国は、自国内の暫定リストを作成して、ユネスコの世界遺産センターに提出します。

<推薦(1年に1件まで)>
その暫定リストに記載された遺産中から、推薦への要件が整ったものを1年に1件(文化遺産・自然遺産をあわせて1件)まで、世界遺産センターに推薦を行います。
その推薦に関する提出期限は2月1日で、それまでに遺産の顕著な普遍的価値を証明する書類であったり、遺産の保全体制・計画などを記載した推薦書を世界遺産センターに提出する必要があります。

<調査依頼>
世界遺産センターは各国からの推薦書を受理したなら、文化遺産であればICOMOS自然遺産についてはIUCNに専門調査を依頼します。

<調査・報告>
ICOMOSとIUCNはその年の夏から秋頃に現地調査を行います。
年内をめどに推薦書の内容を検討し、追加報告書や改善の必要箇所があれば世界遺産センターを通して世界遺産保有国に連絡をします。
最終的な審査結果と提言を含む評価報告書が、推薦書提出期限の翌年に開催される世界遺産委員会の6週間前までに世界遺産センターに提出される。
複合遺産については、ICOMOSとIUCNがそれぞれ調査を行い、それぞれ評価報告書を提出します。

<審議>
それぞれの報告書をもとに、世界遺産委員会で審議が行われます。
審議における評価は「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4段階で決議されます。
推薦書の提出から世界遺産リスト記載までの流れは、1年半程度の期間を要します。

世界遺産に関係する機関

<世界遺産条約締約国会議>
世界遺産条約を採択した全締約国による会議。
世界遺産基金への分担金の決定や監査、世界遺産委員会委員国の選定の他に、世界遺産委員会から提出された活動報告書を受理する。

<世界遺産委員会>
21カ国で構成される政府間委員会で、通常1年に一度開催される。
世界遺産リストの記載に関する審議や危機遺産リストの審議、世界遺産基金の使途の決定、作業指針の改定、登録遺産の保全状況の審査などを行う。
委員国の任期は6年であるが、各締約国に均等に機会が与えられるように、自発的に4年で任期を終えることや、任期終了後、次の立候補までの機関は6年あけることなどが求められている。

<世界遺産センター>
1992年に設立され、パリのユネスコ本部内に常設されている世界遺産委員会事務局を担う機関。
推薦書の受理や登録、世界遺産委員会の運営、世界遺産および世界遺産条約の広報活動などを行なっている。

<ICOMOS(イコモス)>
国際記念物遺跡会議。
本部をフランスのパリに置くNGOで、ヴェネツィア憲章の原則をもとに設立された。
建築物や考古学的遺産の保全のための理論や方法論、保全への科学技術の応用を推進することを目的としている。
世界遺産委員会には諮問機関として参加しており、契約により推薦書作成に関するアドバイスも行う。

<IUCN(アイユーシーエヌ)>
国際自然保護連合。
本部をスイスのグランに置く世界的組織。
ユネスコやフランス政府、スイス自然保護連盟などの呼びかけにより1948年に設立された。
自然の多様性を保全し、持続可能な自然資源の利用を行うため、世界中の科学者を支援することを目的としている。
世界遺産委員会に諮問機関として参加している。

<ICCROM(イクロム)>
文化財の保存および修復の研究のための国際センター。
本部をイタリアのローマに置く政府間機関で、ユネスコでの採択を経て1959年に設立された。
不動産と動産両方の文化遺産の保全強化を目的とした研究や記録の作成・助言、技術支援、技術者や専門家の養成、普及・広報活動などを行う。
世界遺産委員会に諮問機関として参加している。

世界遺産登録の概念の変化

1978年の世界遺産登録開始から1990年代初頭までは、記念物や建造物が作られた当時のまま残されていることが重視されました。
そのため、ヨーロッパの教会や中世の城など、風化しにくい石の文化に属する遺産が多く登録されていました。

しかし、それでは世界遺産リストに不均衡が生じることとなり、リストの信頼性が損なわれるので、その不均衡を是正すべく様々な方策が採られ、その過程で世界遺産登録の概念も変化しました。

<文化的景観>

1992年に採択された文化的景観は、人間が自然と共につくりあげた景観を指す概念で、文化遺産に分類されるものの、文化遺産と自然遺産の境界に位置する遺産といえます。
これによって従来の西欧的な考え方よりも柔軟に文化遺産を捉えることが可能となりました。
1993年にニュージーランドの『トンガリロ国立公園』で、初めて文化的景観の概念が適用されました。

文化的景観の3つのカテゴリー
<意匠された景観>
庭園や公園、宗教空間など、人間によって意図的に設計され創造された景観<有機的に進化する景観>
社会や経済、政治、宗教などの要求によって生まれ、自然環境に対応して形成された景観。
農林水産業とも関連している。
すでに発展過程が終了した「残存する景観」と、現在も伝統的な社会の中で進化している「継続する景観」に分けられる。

<関連する景観>
自然の要素がその地の民族に大きな影響を与え、宗教的、芸術的、文化的な要素と強く関連する景観。

<グローバル・ストラテジー>

1994年に「世界遺産リストにおける不均衡の是正及び代表性、信用性の確保のためのグローバル・ストラテジー」が採択されました。
グローバル・ストラテジーは、世界遺産リストの不均衡を是正するための戦略で、選考基準の見直しや世界遺産を持たない国からの登録強化、産業に関係する遺産の登録強化、先史時代や現代の遺産の登録強化などを掲げています。

グローバル・ストラテジーでは、すでに世界遺産リストに複数の遺産が記載されている国に対し、推薦の間隔を自発的にあけることや、登録の少ない分野の遺産を推薦すること、世界遺産を持たない国の推薦と連携することなどが求められています。

練習問題

◆世界遺産の登録に関する、以下の問いに答えなさい。

[1]世界遺産の登録基準などを定める「作業指針」の正式名称として、正しいものはどれか。

①世界遺産登録を円滑に行うための作業指針
②世界遺産条約履行のための作業指針
③顕著な普遍的価値を証明するための作業指針
④世界遺産事業の運営及び管理のための作業指針

[2]世界遺産センターに関する次の文中の語句で、正しくないものはどれか。
世界遺産センターは、(①ユネスコ本部内)に常設されており、世界遺産の推薦書の受理や(②世界遺産の広報活動)などを行う。推薦書を受理した後に、文化遺産であれば(③ICCROM)、自然遺産であれば(④IUCN)に専門調査を依頼する。

①ユネスコ本部内
②世界遺産の広報活動
③ICCROM
④IUCN

[3]世界遺産委員会の説明として、正しいものはどれか。

①推薦された遺産を審議し、「登録」「情報照会」「不登録」の3段階で決議する
②委員国の任期は5年である
③世界遺産の保有国のみが委員国に選定される
④世界遺産基金の使途を決定する

◆世界遺産に関する以下の問いに答えなさい。

[4]主に文化遺産に求められる概念である「真正性」の説明として、正しいものはどれか。

①建造物や景観などがそれぞれの文化的背景や独自性の伝統を継承していること
②保有国の法律などで、遺産を保護する仕組みが構築されていること
③世界遺産の顕著な普遍的価値を構成するために必要な要素が全て揃っていること
④建造物の保存や修復に関し、アテネ憲章において示された概念を継承していること

[5]文化的景観のカテゴリーのひとつである、「社会や経済などの要求によって生まれ、自然環境に対応して形成された景観」の呼び名として正しいものはどれか。

①風土性を創出する景観
②人間性を育む景観
③広域的に計画された景観
④有機的に進化する景観

[6]「グローバル・ストラテジー」に関する文中の空欄( A )、( B )に当てはまる語句の組み合わせとして正しいものはどれか。
「グローバル・ストラテジー」は世界遺産リストにおける( A )の確保のため、( B )を是正する目的で採択された戦略である。

①A.信用性 ー B.不均衡
②A.信用性 ー B.法令違反
③A.完全性 ー B.不均衡
④A.完全性 ー B.法令違反

解答とエンディング

解答 [1] ② [2] ③ [3] ④ [4] ① [5] ④ [6] ①

いかがでしたか。
昨日学習分の復習問題も入れていますので、問題数6問と多めの出題になりました。
やはり、選択肢の内容も作り込まれている感じがあって難しいですね。

本日の学習内容は、試験の冒頭あたりでの出題で確実な得点が求められるところでもあります。
300あるすべての世界遺産からの出題率に比べても高い部分にはなりますので、繰り返し練習問題を解きながら身につけていきましょう。
今回初めて「グローバル・ストラテジー」という言葉も出てきました。3、4級では取り扱わなかった概念ですのでこれもしっかり頭に入れないといけませんね。

では、また。

tomo

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