危機遺産②(エルサレム)

本日も昨日に引き続いて、危機遺産をご紹介します。
危機遺産についての復習は(「危機遺産」と「負の遺産」)をご参照ください。
本日のエルサレムは隣国のヨルダンが登録を申請した非常に稀な世界遺産です。
武力衝突などにより、現在はどこの国にも帰属しない状態で、イスラエルが実効支配している状態のエルサレム、危機遺産に登録された理由は保全や維持管理の不備ということですが、複雑な事情を鑑みても早期解決は難しそうに感じます。

①エルサレムの旧市街とその城壁群(ヨルダン・ハシュミット王国による申請)

登録年:1981年/1982年危機遺産登録
登録基準:(ⅱ)(ⅲ)(ⅵ)
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の聖地

エルサレムは前1000年ごろ、古代イスラエル王国のダヴィデ王が首都に定め、ソロモン王が「*十戒」を収める神殿を建てたことから、聖地となった。
今日でも、ユダヤ教とキリスト教、イスラム教の3つの宗教にとって聖地となっている。

*十戒:唯一神ヤハウェがモーセに与えたとされる啓示

ユダヤ教の聖地は「嘆きの壁」と呼ばれるもので、紀元前1世紀のヘロデ王の時代に築かれたエルサレム神殿の西側外壁の遺構である。
故国をローマ軍によって破壊され、離散(ディアスポラ)を強いられたユダヤ人の祈りの情景からこの名がつけられた。

キリスト教にとってこの地は、イエス・キリストが磔(はりつけ)にされ処刑された場所であり、その墓があるとされるゴルゴダの丘には「聖墳墓教会」が335年に建てられた。

イスラム教の聖地は「岩のドーム」で、イスラム教創始者のムハンマドが大天使ジブリール(ガブリエル)に導かれて天界の旅に出たとされる聖なる岩を覆うため築かれた祈願堂である。

旧市街は宗教や人種によって4区画に分けられており、北東部の最も面積の広い地域がイスラム教徒、南西部がアルメニア人、北西部がキリスト教徒、南東部がユダヤ人の居住区となっている。

聖地エルサレムは、その宗教的かつ歴史的な背景から、領有権を巡ってたびたび宗教間の争いが起こった。
638年にはイスラム軍が占領し、メッカとメディナに次ぐ第3の聖地とした。
1099年にはキリスト教徒による聖地エルサレム奪還を目的とした第1回十字軍がイスラム教とを撃破し、エルサレム王国を樹立した。

しかし、1187年にイスラム教の王朝であるアイユーブ朝のサラディンが奪還して以降、20世紀初頭までほぼイスラム教徒の支配下にあった。
19世紀後半の*シオニズム運動を受けてユダヤ人の人口も増加し、1929年には「嘆きの壁」ユダヤ人とイスラム教徒が武力衝突する「嘆きの壁事件」が勃発した。
これは双方に100名を超える死者が出る事件となった。

*シオニズム運動:イスラエルの地(パレスチナ)に故国を築こうとするユダヤ人の近代運動

現在においても帰属問題は解決されておらず、1967年の第3次中東戦争以降はイスラエルが実効支配しているが、国際社会はそれを認めてはいない。

紛争が続く情勢のため、隣国のヨルダンが世界遺産登録申請を行い、遺産保有国は実在しないエルサレムとなるなど、例外的な登録となっている。
登録翌年には、急速な都市開発や巡礼者を含む観光客増加による被害、維持管理体制の不備などを理由として、危機遺産リストに記載された。
全ての遺産の中で最も長い間、危機遺産リストに記載されており対策が求められる。

英語で読む世界遺産

Jerusalem is the important holy site of three religions:Judaism, Christianity and Islam.
Due not only to the Israeli-Palestinian conflict, but also city development and damage from tourism, Jerusalem has been inscribed on the List of World Heritage in Danger since 1982.

②本日の練習問題

世界遺産検定3級の過去問題からの出題です。

[1]『エルサレムの旧市街とその城壁群』には3つの宗教の聖地であることを示す遺構が残る。キリスト教の他に、エルサレムを聖地とする宗教の組み合わせとして正しいものはどれか

①ユダヤ教 ー ヒンドゥー教
②ユダヤ教 ー イスラム教
③ゾロアスター教 ー ヒンドゥー教
④ゾロアスター教 ー イスラム教

[2]「危機遺産リスト」の正式名称として、正しいものはどれか

①危機を回避するべき世界遺産リスト
②危機にさらされている世界遺産リスト
③登録抹消の危機にある世界遺産リスト
④消滅の危機にある世界遺産リスト

以下、回答になります

[1] ② [2] ②

いかがでしたか?
前日に続き、危機遺産リストに登録されている世界遺産について学びました。
危機遺産リストには約50程の世界遺産がありますが、紛争や国内の情勢不安が原因の場合もあれば、過度の開発によるもの観光客の増加に保全計画が対応できない場合など様々な原因でリスト入りしています。
一朝一夕にどうこうなるものではありませんが、一つでも多くの世界遺産が危機を脱して願わくば、観光産業との両立ができるといいですね。

では、また明日もお待ちしています。

tomo

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